◉納豆を栄養学的に見たら最強って話
・納豆で死亡率が低下
2020年1月29日の国立がん研究センターの発表によると、納豆などの発酵性大豆をよく食べている人は、食べていない人に比べて死亡率が10%低下することが分かっています。
この研究では45~74歳の92,915人に対して、約15年間の追跡調査を実施(すごい期間ですね)。納豆などの発酵性大豆を1日50g以上食べると、男女ともに死亡率が低下したというものです。
納豆などの発酵性大豆なので、ここには味噌も含まれます。50gと考えると、ちょうど納豆1パック分に相当します。ものすごく分かりやすく言うと、納豆1日1パックが死亡率を下げたということになるわけですね。
納豆、味噌、豆腐の摂取量と総死亡リスクの関連データを見ても、納豆と味噌は死亡率が下がっていました。
この傾向は、特に女性に顕著に表れていて、豆腐はそんなに有意差はありません。ただの大豆も健康にはいいですが、現状のデータを見ると、発酵性大豆の方が身体には有益ということですね。
先程と同じ研究をさらに細かくチェックすると、面白いことが分かります。
納豆を1日半パック以上食べる人は、最も食べる頻度の少ないグループよりも、脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患の死亡リスクが20%も低かったこんです。また大豆食品のうち納豆、味噌、豆腐について死亡リスクとの関連を見たところ、女性では味噌でも摂取量が多いほど死亡リスクが低下していて、豆腐は男女ともに低下の傾向は見られませんでした。
豆腐も身体にはいいですが、栄養は単一の栄養素だけではなく、さまざまな栄養素を摂取して相乗効果を見た方がいいため、単品だと中々効果が見られなかったんです。
・納豆の良さは「ビタミンK」にあり
納豆の何が良かったのかというと色々な説があるのではっきりしたことは言えませんが、私が推しているのはビタミンです。
納豆はビタミンKが豊富です。ビタミンKは脂溶性ビタミンの1つで、現代の日本人に不足している栄養素と言われています。ちなみにビタミンKは血液凝固作用や骨を強くする、糖質の代謝をよくするなどの効果があるため、体にとってとても重要な栄養素です。
そんなビタミンKですが、納豆には1パックあたり約600μgも含まれます。これは同じ大豆食品の豆腐や味噌に比べても、圧倒的に多いです。そのため、私はビタミンKを摂取できる食品として、納豆を意識して摂るようにしています。ビタミンKの含有量だけで言えば、あのほうれん草よりも多いくらいです。
納豆は他にもマグネシウム、カリウム、タンパク質、水溶性食物繊維、ビタミンB群、レシチンも豊富に含まれます。
・納豆に含まれる「ナットウキナーゼ」がヤバい
他にも納豆には非常に多くの成分が含まれていて、特にナットウキナーゼは世界中で注目されています。
ナットウキナーゼとは、納豆のネバネバの部分に含まれるたんぱく質分解酵素で、血栓の溶解作用があります。血管が詰まらないようにしてくれる作用のことです。またナットウキナーゼ自体にも、血圧低下作用や抗動脈硬化作用、血中脂質の正常化、神経保護作用がある認められています。
納豆の「納豆菌」は悪玉菌を倒し、善玉菌を増やしてくれる
納豆と言えば、「納豆菌」も有名ですよね。納豆菌は枯草菌の1種で、稲の藁に多く生息しています。納豆菌の代表的な酸性物質はナットウキナーゼ、ビタミンK2、ジピコリン酸、ポリグルタミン酸などです。このうちジピコリン酸には、放射線物質を解毒する作用や悪玉菌を倒す抗菌性があります。
さらに嬉しいのは、納豆菌は悪玉菌を倒すだけでなく、ビフィズス菌や乳酸菌を増やす効果もあるんです。その仕組みはまだ解明されていませんが、ビフィズス菌や乳酸菌を増やすことで腸内環境を保つことが分かっています。
この納豆菌、すさまじく生命力があります。酒蔵によっては、仕込みの時期に納豆を食べてはいけないというルールを設けているところもあるそうです。納豆菌が付いてしまうと酒造りに欠かせない麹菌がやられ、いいお酒ができなくなってしまうからなんだとか。恐ろしくパワフルですよね…(笑)。
納豆で気になる「遺伝子組み換え」は、ほぼ身体に害はない
現在流通されている納豆のほとんどが、人工ものの納豆菌を利用しています。納豆に独特の臭みを消すため、探査分岐脂肪酸という物質を作る遺伝子をなくした、組み換え技術を施しているんです。天然ものは臭みがより強くなってしまうため、臭みを作る遺伝子を破壊させた人工菌を作り、納豆に使用しているというわけですね。
遺伝子組み換えというと、安全性が気になる人も多いでしょう。これに関しては、現状ほぼ身体に害はないと言えそうです。(遺伝子組み換えされた菌ではなく、栽培過程での除草剤の使用や大豆の遺伝子組み換えについては考慮が必要です)
これだけ長い間食べられてきていますが、特に問題になっていないし、むしろ有益な結果の方が多いくらいです。遺伝子組み換えは純粋培養のため、雑菌がないというメリットがあります。
よく自家製のヨーグルトや納豆を作る人がいますが、素人が作ったときに怖いのは変な雑菌が入ること。それを食べることで副作用が出るくらいなら、純粋培養の単独の菌を使うほうがずっと安心です。納豆本来のメリットもちゃんと確保されています。
もちろん、天然の納豆のプロのメーカーから買うことができれば、それを食べることがベスト。ただし正直コストが高いので、毎日食べるのはむずかしいかもしれません。
納豆のように継続して食べる食品に関しては、ベストを目指さずベターな選択をしていくことが、継続できるコツです。オーガニックや完全無農薬や自然栽培、天然、伝統食など理想を言えばきりがありません。現代社会でこの理想ができる人は、相当なお金持ちと言えるでしょう。
このベストを目指しすぎると、かえってストレスという猛毒を抱えてしまいます。納豆もそれと同じで、現実的に手にしやすいものを、毎日食べたほうがいいでしょう。
・納豆は「国産大豆」使用が正義
最後に納豆の選び方ですが、国産大豆を使用した納豆を選ぶのが大前提です。
気をつけてほしいものは、アメリカ産やカナダ産。「食べると毒になる」というのは極端ですが、納豆菌ではなく大豆そのものに、数%でも遺伝子組み換えのものが使用されているかもしれません。継続できるという範囲で、国産の大豆を使用した納豆を選ぶといいでしょう。
あと、付属のたれやからしは使わない方がいいです。これらには添加物が多く含まれています。調味料でなく調味料「風」の付属品なので、シンプルに醤油などで味付けしましょう。
また、ビタミンKの含有量で比べた場合、ひきわり納豆の方が丸大豆より約1.5倍ビタミンKが高いです。ビタミンKの視点で食べるのであれば、ひきわり納豆がおすすめです。
納豆にはたびたびダイエットや健康でブームを呼び、店頭から品薄になったりします。しかし、一時的に大量の納豆を食べても、身体に有益になるわけではありません。重要なことは継続すること。多すぎず少なすぎず、適量を毎日食べるようにしましょう。
・栄養バランスでみたひき割り納豆
ひきわり納豆の話をしたので、納豆の種類と栄養価の違いについても話していこうと思います。ひきわり納豆と普通の納豆では、ひきわり納豆の方がビタミンKが高く1.5倍以上違うことは先程お話ししました。
しかし、マグネシウムや鉄は若干普通の納豆の方が高く、カリウムはひきわり納豆の方が高いというような違いもあります。食品成分表の例なので全てがこうとは限りませんが、ビタミンに関してはひきわり納豆の方が多いでしょう。
ただし、発酵食品を食べると悪化するSIBO(小腸内細菌異常増殖)やIBS(過敏性腸症候群)、カンジダ病、真菌症、グルタミン酸不耐などの人は気をつけてください。健康上の問題がなければ食べてもいいですし、問題があればわざわざ食べる必要はありません。
まとめ
納豆のすごさ、皆さんにも伝わったでしょうか。健康へのメリットがめちゃくちゃ多く、かつお手軽に食べられる。病気や体質で食べられないという方以外は、積極的に納豆を食べるようにしてみましょう!
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