◉睡眠のメカニズムと質を決める要因とは

◉休養の意味とその種類
近年厚生労働省は、健康のためには適度な運動やバランスのとれた栄養・食生活だけではなく、心身の疲労の回復をもたらす休養が必要だとし、この3つを『健康増進の三原則』と呼んでいます。
『休養』という言葉には、“仕事等の活動によって生じた心身の疲労を回復し、元の活力ある状態に戻す”という「休む」の意味と、“明日に向かっての鋭気を養い、身体的、精神的、社会的な健康能力を高める”という「養う」の意味の2つの側面があります。
運動や栄養だけでは心身の疲労を回復することは難しいため、休養がなければ本当のオプティマルヘルスを作ることはできません。
適切な「休み方」や「養い方」を知り、休養についての理解を深める必要があります。


◉休養の種類
『休養』といえば睡眠、もしくはゴロゴロするなどが浮かびがちですが、睡眠のとりすぎや1日中身体を動かさない生活をしているとむしろ疲労がたまってしまうことがあります。
確かに疲労回復には睡眠を代表とした消極的休養(Inactive rest)を充分にとり身体を休めることが基本ですが、休養には消極的休養だけではなく軽運動を行う積極的休養(Active rest)があります。
これらの休養について正しく理解することで、問題となっている疲労に対して適切な休養を選択することができオプティマルヘルスへと近づくことができます。


◉消極的休養
消極的休養とは、寝る、のんびり過ごすなど安静にすることで心身を休めることです。
整体、タイ古式マッサージ、アロマテラピーなどの代替療法の専門家にボディーケアを依頼することは、ワンランク上の消極的休養と言えます。
積極的休養
積極的休養とは、散歩・ストレッチ・レジャーやキャンプなどの軽運動のような軽く身体を動かしながら心身のリフレッシュをすることです。
身体を軽く動かす積極的休養を行うことで、血流が良くなり全身に酸素や栄養が行き渡り、脳内にドーパミンやセロトニンなどの快楽物質が分泌され、疲労感が軽減する効果があるということがわかっています。
代替療法を取り入れたり、パーソナルトレーナーに正しいコンディショニングを教わったりすることで、休養の質は劇的に向上します。
睡眠~効果的睡眠とそのメカニズム~
休養において積極的休養と対を成す消極的休養とは、眠る、のんびりと過ごすなど安静を保つことで心身の疲労を回復する休養のことを指します。その消極的休養の最たるものが睡眠です。
睡眠は、主に脳(特に大脳)と身体の疲労回復や修復などのメンテナンスのために行われます。
脳と身体の機能維持をするためには、良質な睡眠をとることが重要です。良質な睡眠をとるためには、睡眠のメカニズムとその実践法を知る必要があります。


◉睡眠時の脳波
大脳(皮質)には微量な電流が流れており、これは脳波(Erectroencephalogram:EEG)と呼ばれています。脳波はHzの単位で表され、周波数が異なります。
脳波にはガンマ(γ)波(25~70Hz)、ベータ(β)波(14~25Hz)、アルファー(α)波(8~13Hz)、シータ(θ)波(4~7Hz)、デルタ(δ)波(0.5~3.5Hz)の5種類が存在します。
周波数が高ければ高いほど脳は覚醒し、低ければ低いほど脳は眠りに近づくといわれています。
睡眠以外の場面では、勉強したいときはβ波、眠りたいときはα波、ひらめきを必要とする時はθ波などともいわれています。
覚醒している状態で目をつぶるとα波(8~13Hz)が現れ、目を開け思考するとα波は活動を弱め速波に変わります(αブロッキング現象)。


◉睡眠の種類
睡眠中の脳波の状態を測定したところ、睡眠にはノンレム睡眠(Non Rapid Eye Movement Sleep:Non REM)とレム睡眠(Rapid Eye Movement Sleep:REM)の性質の相反する2種類があります。
ノンレム睡眠は、徐波睡眠とも呼ばれ、脳波が大振幅の緩やかな波を描く睡眠です。
もう1つは、睡眠中、眼球が激しく運動をすることからRapid Eye Movementの頭文字をとり、レム(REM)睡眠と睡眠と名付けられました。脳波が覚醒時に似た低振幅の波を伴う睡眠です。

◉ノンレム睡眠
睡眠の約8割はノンレム睡眠で、脈拍、血圧、呼吸が安定し、脳が活動を低下させ休息している状態です。大脳の活動度が低ければ低いほど、眠りが深い熟睡状態となります。
深いノンレム睡眠がとれていれば、全体の睡眠時間が短くとも脳は効率良く回復してくれます。深いノンレム睡眠がとれるかどうかが、脳の回復における鍵となります。
最近の研究ではノンレム睡眠が記憶の強化に重要な役割を果たしていると言われています。
免疫の増強、細胞の修復などが行われている時間で、成長ホルモン、プラクチン、副腎皮質ホルモン、性腺刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモンなどは、睡眠と同時に分泌が高まります。
成長ホルモンは主に夜間の睡眠時に分泌され、特に睡眠後約30~60分経過後、ノンレム睡眠の時に多く分泌されます。
ノンレム睡眠は脳波の現れ方、つまり眠りの深さにより四段階に分けられます。

◉レム睡眠
レム睡眠では筋肉の緊張がゆるみ、全身の力は抜けていますが脳が活発に動いている状態です。身体の休息、記憶の定着・強化、情報の整理などに関係があります。
脳波は覚醒状態にありながら身体は睡眠状態にあることから、逆説睡眠(paradoxical sleep)とも言われます。レム睡眠では呼吸は浅く早く、交感神経が優位の状態で眼球が活発に動いています。
レム睡眠中、脳は覚醒し記憶情報の処理を行っており、それが夢に繋がっていると考えられています。
生まれたばかりの赤ちゃんでは睡眠時間のうち5割をレム睡眠が占め、成長と共にこの割合は減少し最終的に2割になります。
このことからレム睡眠は脳の発達に重要な役割を果たしているとも考えられています。


◉睡眠のステージ
脳波は意識レベルの違いで変化をもたらしますが、睡眠時の脳波は5段階の分類(Aserinsky & Kleitman,1953)で説明されます。
個人差がありますが、睡眠に入る(第1段階)とまず深い眠りのノンレム睡眠(第4段階)に移行し、その後眠りの浅いレム睡眠(第5段階)まで1.5~2時間程度かけて、移行します。これを一晩で4~5回繰り返します。
ノンレム睡眠は最初のサイクルの眠りの深さを1とすると、次のサイクルでは2分の1、その次では4分の1と次第に浅くなり、覚醒へ向かいます。
睡眠時間を左右する要因
100年前に平均9時間あったとされる睡眠時間が現代では7時間にまで短縮されてきています。睡眠時間は基本的に疲労度と睡眠の質により決まりますが、それ以外にも以下のような要因があります。


1.体質
一般には睡眠時間は7時間前後とされていますが、睡眠時間の差は遺伝的要素が大きく関係していると言われています。
6時間以下でも十分というショートスリーパーと呼ばれる人や、10時間以上眠らないと日中頭が冴えた状態で過ごせないというロングスリーパーと呼ばれる人もいます。
ショートスリーパーで有名なのは睡眠時間が3時間だったナポレオンや4時間のエジソン、ロングスリーパーで有名なのは10時間以上眠っていたというアインシュタインです。
(1) ショートスリーパー
ショートスリーパーは睡眠時間の合計自体は短いものの、レム睡眠の時間が圧倒的に少ないため相対的にノンレム睡眠の時間が長くなり、ノンレム睡眠の長さではバリアブルスリーパーとほとんど差が見られません。
日中の苦痛がある場合に不眠症で、疲労や集中力の低下などの症状がない場合には、短時間睡眠者であり不眠症ではありません。(『精神障害の診断と統計マニュアル』より)
短時間睡眠者には、朝型人間が多く、病的なまでに元気で動きが速い人がいます。そうした状態を研究者は「行動活性化している」と言い、おそらく潜在性軽躁病ではないかと考えられています。
彼らは異常ではなく、楽天的でエネルギーがみなぎっており、感情的に立ち直りが早いこの“障害”は遺伝性で、hDEC2遺伝子の突然変異が関係しています。
(2) バリアブルスリーパー
圧倒的多数がバリアブルスリーパーで、ショートスリーパーとロングスリーパーの中間的、もしくは個人によりどちらか一方よりの傾向を示すことがあります。
(3) ロングスリーパー
ロングスリーパーはレム睡眠の時間が長く、ノンレム睡眠の時間の割合が少ないためある程度の長さの睡眠時間をとらなければ眠りの満足を得られないと言えます。
この差は生まれつきの体質次第であると考えられています。


2.季節・天候
日照時間長さに応じて、睡眠時間も変化するのが自然です。一般的に、日照時間の短い夏には短くなり、長い冬には長くなります。
3.ライフサイクル
赤ちゃんや幼児は大人より長く眠り(1日の約半分が睡眠時間)、30代後半からは加齢と共に必要睡眠時間が減っていきます。
20代の頃に8時間眠っていた人も、70代では6時間以下になるといったケースも多くあるといわれています。
東京都内の小中学生を調査の結果「キレる」、「ムカつく」といったイライラ感の強い子どもの半数以上が午前0時以降に寝ていることがわかりました。
就寝時間が遅くなった子どもは、朝起きられずに遅刻しがちになり、寝不足の上に朝食抜きとなるため集中力を欠き、イライラ感を持ち、勉強や遊びに取り組みにくくなります。
また、睡眠不足が長期化すると成長ホルモンの分泌が乱れ、心身の健全な発達が妨げられます。そのため、日の出と共に起きて朝食、排便を済ませることが望ましいとされています。
子どもには十分な睡眠が大人以上に重要です。


◉小学生の実験
ある実験で、小学5年生で、国語、算数とも5時間、6時間と睡眠時闘が長くなるにつれて児童の成績がアップしたという結果がでました。睡眠時間が7時間以上10時間未満で、成績は最良になりましたが、それ以上寝ると再び成績が下がっていたんです。
陰山英男・立命館大教授は、百マス計算により、子供の学力を飛躍的に改善したことで有名です。
彼は2003年度から3年間、岡県尾道市の小学校長を務めていた当時、かつての子供の方が学習時間は多かったものの、ゆとりを感じていたのではないかと指摘しています。
陰山教授は十分な睡眠を取ることで頭がすっきりして学習に集中でき、一日を有意義に過ごせ、心理的にも余裕が生まれていたと考えました。
現代の子供は、1日2時間以上をインターネットや携帯電話などに費やしています。それが原因で睡眠時闘が削られ、子供たちの精神面に与える影響は計り知れないと警鐘を鳴らしています。
2006年に山口県で行われた調査でも、学力偏差値と知能指数のどちらも就寝時刻が午後9時までの子供が最良で、それよりも遅くなるにつれて明らかに低下していきました。
一方、午後8時前と就寝時刻が早過ぎる場合も、点数が悪い結果がでました。


まとめ
子供の実験だけでなく、大人もまたスマホやSNSを使う時間が長くなり、睡眠時間が減っています。ボディメイクでは運動・食事だけでなく、休養も大切です。まずは1日7時間、睡眠を確保できる生活スタイルを模索してみましょう。

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