◉コレステロールは悪者じゃない?
かつて、ダイエットや美容でよく聞いた「コレステロール」。脂質の中の「誘導脂質」と呼ばれる種類の1つで、善玉コレステロールと悪玉コレステロールに分けられます。
しかしながら、コレステロールにも身体に欠かせない役目があります。今回はそんなコレステロールについて、栄養学的に解説します!
◉コレステロールってそもそもなに?
厚生労働省は2015年4月改訂の「日本人の食事摂取基準(20.15年版)」で、平成16年から設けていた成人男750㎎、女600㎎を上限としていた目標量を撤廃しました。
なぜ撤廃したのか。厚労省栄養指導室は「目標量を設定するのに十分な科学的根拠が得られなかったため」と説明しています。
食事由来は15~30%程度で、摂取量によって合成されるコレステロール(C27H46O)の量(約12㎎/kg/日)は変わります。
コレステロールの機能
① 細胞膜の構成
リン脂質と共に細胞膜を構成します。血液中では、リポたんぱく質として全身を移動しています。
コレステロールには大きく分けて、善玉コレステロールと言われるHDLコレステロール(High Density Lipoprotein:HDL)と悪玉コレステロールと言われるLDLコレステロール(Low Density Lipoprotein:LDL)の2種類あるのは有名です。
脂質異常症(Dyslipidemia:2007.7高脂血症から改名)とは、血液中に含まれる脂質が過剰、もしくは不足している状態を指します。
心臓病の危険を低下させるためには、HDLコレステロールとLDLコレステロールの比率、LH比が重要です。
LH比とは、「LDLコレステロール値÷HDLコレステロール値」で示される比率のことです。
LDLコレステロール値が135㎎/dlで、HDLコレステロール値が45㎎/dlの場合、LH比は3.0.となります。
個別の数値(135㎎/dl、45㎎/dl)は「正常」の範囲ですが、LH比3.0.という数値は、動脈硬化が進んだ「かなり危険」な領域です。
LH比が2.0.を超えないことが望ましいとする病院が増えています。
Ⅰ.善玉コレステロール
善玉コレステロールは、細胞内や動脈内にある余分なコレステロールを体外に代謝排泄するために肝臓に運搬します。脂質のうち40.%が善玉コレステロールです。
HDLが40㎎/dl未満の脂質異常症(低HDLコレステロール血症)です。1997年の国民栄養調査では、女性5%、男性16%が該当します。
Ⅱ.悪玉コレステロール
悪玉コレステロールは、合成されたコレステロールを肝臓から末端組織に運搬します。
脂質のうち60%がコレステロールです。血中LDLの正常値は70~140㎎/dlで、140㎎/dl以上で脂質異常症(高LDLコレステロール血症)です。
LDLコレステロールの過剰は、血栓の動脈壁に付着を招き、虚血性心疾患、脳卒中を引き起こします。血栓が動脈にできると酸素と栄養が各細胞に行き渡らずに、最悪の場合、死に至ります。
② ホルモンの材料
ステロイドホルモン(コルチゾール、アルドステロンなど副腎皮質ホルモンやプロゲステロン、エストロゲン、テストステロンや誘導体など性ホルモン)の合成の主要な前駆体です。
③ 脂溶性ビタミンの代謝
紫外線により皮下脂肪でVD(前駆体)をつくります。
◉コレステロールの豆知識
90年前のソビエトで行われた、うさぎの実験。これがきっかけで、たまごに含まれるコレステロールが問題視されはじめました。
しかし最近、この実験結果はヒトには当てはまらないことが確かめられています。
それどころか、卵黄に含まれているレシチンは、善玉コレステロールを増やし、血管壁についたコレステロールを溶かして、血液粘稠度を下げる働きがあると報告されています。
最近、卵黄に含まれるコリンは、脳を活性化して老人性痴呆症の防止に有効だと注目を集めています。
また体内では、神経伝達物質アセチルコリンに変わり、記憶力や学習能力をアップ。さらにたまごは全食品の中で、最もコリンの含有率が高く、吸収のしやすさでも、極めて良質だとされています。
そしてたまごには、肝臓でアルコールを分解するときに必要なメチオニンが多く含まれています。このメチオニンは、二日酔いの薬にも入っているんです。
さらに、弱った肝臓の回復力を高める成分であるシスチン、グリシン、グルタミンもバランス良く含まれています。
体に有害なウイルスを溶かす働きを持つリゾチームは卵白に含まれる酵素です。殺菌効果抜群で免疫力を高めるので、風邪薬にも使われています。
ただし、高カロリーでもあり、多量に続けて摂取するとアレルギー体質になりやすいという報告もあります。1日、1~2個が適量です。
ーまとめー
コレステロールはつい最近まで、健康被害の大きい脂質とされてきました。しかしその後の研究で、健康維持にも必要であるという評価が一般的になりました。
こうした研究を通じて、たまごのように大きく評価を変える食品もあります。
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